Biotope Journal Weeklyvol.1 北池袋、工場上の秘密基地(2012.10.14)
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Biotope Journal Weekly
vol.1(2012.10.14)

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はじめましての方も、そうでない方も、こんばんは。
退屈ロケットのスガタカシです。
日曜日の夜、いかがお過ごしでしょうか。

Webサイト"Biotope Journal"とメールマガジン"Biotope Journal Weekly"、
ぼくたちが日本を出発してから1ヶ月とすこし、ようやくお披露目すること
ができました。(今夜は中国四川省、成都からお送りしています。)

今週オープンしたWebサイト"Biotope Journal"では
毎週、世界各地で出会った人の日常の空間に焦点を当てて、
日々すこしずつ、写真と文でくらしの風景をお届けします。

週末発行のメールマガジン「Biotope Journal Weekly」では、
その週にWebサイトで取り上げた方へのインタビューをもとにした記事を中心に、
相方の寿太郎くんが書く旅日記、ふたりのオフトークも掲載。
Webサイトとメールマガジン、ぜひあわせておたのしみください。

さて、メールマガジンの第1号でお送りするのは
「北池袋、工場上の秘密基地」の住人、鈴木啓太くんの記事。
じつは鈴木啓太、けいくんは、ぼくのもっとも仲の良い友人のひとりです。
ぼくたちが出国した後は各地で出会った人々の記事になるので、
日本の友人を取り上げる今週と来週とは、すこし趣が異なるものに
なるかもしれませんが、"Biotope Journal"のプロローグとして、
お楽しみいただければ幸いです。

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■ Biotope Journal リポート #001|鈴木啓太
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出会ったのは2年半前の2010年4月。
東京に出てきたばかり、19歳だった彼は、
なにか張りつめたような空気をまとっていた。
話しかけるとこちらが驚いてしまうほど礼儀正しくて、
かたい表情をすこし崩して、好きな音楽や、映画の話をしたことを覚えている。

◆生活 ―「クッキーを食べます」

ベッドも、食卓も、テレビも、炊飯器も、掃除機も、食器棚も、
電子レンジも、冷蔵庫もない。
代わりにギターやキーボード、Macやアンプやミキサーなどの電子機器、
それにさまざまな場所から垂れ下がる、おびただしい数のケーブル。

それが彼、鈴木啓太の部屋だ。
冷蔵庫がなくてご飯はどうしているのかと尋ねると、
「クッキーを食べます」とニコニコ答える。
白いご飯はお腹が重くなるのが嫌だから、誰かと一緒のときに
しか食べることはない。
でも風邪をこじらせたら医者に「食生活に気をつけましょう」
と言われたので、最近は健康を気づかっているらしい。
野菜ジュースと、食パンにクリームを塗って(時にはきな粉をかけて)
食べている。

朝起きて新宿へ。老舗喫茶店のアルバイトで夜まで働く。
そのあとは夜間の音楽学校に通う日もあれば、バンド仲間と会う日もある。
家にいる時は音楽を聴いたり、曲をつくったり。
毎日のように、借りてきた映画を観ては、本を読む。
音楽と、その創造的な糧を得ること。
彼の生活は実際のところそれがすべてで、
あとのことは心底どうでもいいように見える。

◆映画から音楽へ、それから本。

中学生の頃からフランク・ザッパやノイズ・ミュージック
を聴いていたという話を聞いて、驚いたことがあった。

音楽に興味を持ったきっかけは14歳の頃、テレビで観たB.B.キング。
ほぼ同時に、ノイズ・ミュージックを聴くようになった。

両親は彼が幼稚園の時に離婚している。
でも幼い時期をいっしょに過ごしたお父さんは映画が好きで、
ビデオを借りてきては毎週一緒に観たことをよく覚えている。
小さい頃は「エイリアン」や「チャッキー(映画『チャイルド・プレイ』
シリーズに登場するキャラクター)」が大好きだった。

お父さんと離れて暮らすようになった後も映画、とくに洋画をよく観ていたと
いうから、自然と、音楽を聴く下地ができていたのかもしれない。
そうして、同級生たちも音楽に興味を持ちはじめた中学生時代のある日、
テレビに映ったB.B.キングに、どうしようもなくしびれてしまう。

彼はそれから、レッド・ホット・チリ・ペッパーズにはまって、
(すこし恥ずかしそうに「ギター少年の定番」と言う)
毎日8時間、ギターを弾きまくって過ごす。
昔から、なにかが好きになると極端になってしまう彼だ。
とりわけ14歳からの2年間は「へんてこりん」だったという。
その2年間を音楽にささげると、彼はもう、ギターの先生から
習うことがなくなってしまった。

気になる音楽には片端から手を出して、
ルー・リードの「メタルマシーンミュージック」でノイズ・ミュージックに、
エイフェックス・ツインでテクノを知った。
レディオヘッドやフェラ・クティをはじめとして、
いま好きなアーティストたちに出会ったのもだいたいその頃だ。

それにしても、レッド・ホット・チリ・ペッパーズにハマるギター少年が、
間を置かずにノイズ・ミュージックに手を伸ばすというのは
あまり聴いたことがなかった。

不思議に思って尋ねると、
おじいさんがつけっぱなしにしたラジオから聴こえる
深夜のノイズが大好きだったという話をしてくれた。
彼は両親が離婚すると、祖父母の家に預けられた。
庭にターザンロープを張ってくれたというそのおじいさんは、
骨董市に通うことを習慣にしていて、ノイズ・ミュージック以外にも
古いものへの関心を受け継いだ。

小さい頃にわかれたお父さんやおじいさんばかりではない。
お母さんがやがて再婚すると、こんどはその再婚相手の男性から、
文学やファッションの嗜好をまなぶことになる。

お母さんの再婚相手はファッションから文学まで、
アメリカン・カルチャーが好きな人だ。
小学生の高学年くらいになると、彼の洋服を借りて着るようになった。

本を読もうと思ったのは16くらいの頃だ。
音楽の詩の世界から、ことばそのものの世界へと
関心がつながったのかもしれない。
「本でもそろそろ読んでみようかな」
一緒に暮らしていた男性の本棚に手を伸ばした。
最初に開いたティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』は
数ページでやめてしまったけれど、村上春樹の『風の歌を聴け』が
「怖いくらいしっくりきた」という。
それ以降、村上春樹や、彼が影響を受けた作家の小説を読んできた。
とりわけレイモンド・カーヴァーが大好きだ。

◆幼い頃 ―「お遊戯はしませんでした」

彼が幼稚園や学校でどんな子だったのだろうと思ってたずねると、
そう返事が返ってきた。
今に至るまで集団で何か一つのことをやることは苦手で、違和感しか感じない。

当然小学校では先生に目をつけられていて、
なにか悪いことが起きると、かならず彼のせいになったという。
クラスに一人ぐらいはいる変わり者。
とは言っても、一人ぼっちだったのかというと、そんなことはない。
小学校の高学年くらいまではお兄さんやその同級生と一緒のことが多かったし、
クラスではだいたい「いばりんぼ」のガキ大将。

礼儀正しい彼がガキ大将というのはすこし意外な気がしたけれど、
「負けずぎらいで、ワールドクラスのがんこ者ですよ」
という言葉に納得がいった。
昔から新しいモノ、知らないことを調べるのが大好きで、
友達の間で流行っていることを追いかけるよりも、
みんなが知らない、面白いものを見つけてくるのが好きだった。

小学校高学年の頃に欲しかったものは、
今となっては懐かしのPDA(携帯情報端末)。
両親に買ってもらうため、量販店からカタログをたくさんもらってきては
自分がほしいものがどれで、その機種がいかに優れているか、
いかに自分に必要かを説明したという。
PDAの夢は叶わなかったけれど、代わりにPSXを買ってもらうことができた。

◆これからのこと

高校の頃から、音楽をやって生きていくことは決めていた。
でも、昔から学校という空間、教室に漂う「ずっとここにいる」
という感じが苦手だった彼だ。
「すばらしい学園生活なんて耐えられない」
大学で4年間音楽を学ぶことを想像すると、絶望的な気分になったという。

そういうわけで、彼は結局、大学に通うという道は選ばず東京に出てきた。
ただ一緒に音楽をやれる仲間との出会いを求めて。

東京の街は、新しもの好きな彼には性に合うのかもしれない。
今住んでいるところは、ボロくて汚くて、だだっ広くて、
風通しのよいところが気に入っている。
「どこかしら壊れていたりゆがんでいる方が安心する」
でも、それがどうしてなのかは彼自身にもわからない。

彼は幼稚園の頃に一度、おもちゃ屋でニンジャマンの人形を盗んで、
店の前の下水の排水口に黙って置いてきたことがある。
今でも罪の意識とともによく思い出すエピソードだ。

なにをしたかったのかよくわからない話だけど、
それでも幼少時代を語る彼に暗さはなくて、
大人たちの愛情をうけて育ったことがうかがえる。
今の彼にも、幼い頃に別れたお父さん、おじいさん、
お母さんと再婚した男性から受けた影響が生きている。

5年先の自分のイメージを尋ねてみると「まったくない」という返事。
ただ、今よりもちゃんと音楽がやれていればそれでいい。
将来のことでわかるのは3週間後くらいまで。
その先のことを決めるなんて「ローンを組むようなもの」と彼は言う。

「10年かかってローンを払い終わる頃にはきっと飽きちゃってるんです。
 180の身長を手に入れて、探偵でもやりましょうか。
 フィリップ・マーロウみたいに。」

文・スガタカシ

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■ 今週の参照リスト
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◆Youtube
フランク・ザッパ
Zappa Jamming
http://www.youtube.com/watch?v=u0tV6Lt4UDE

B.B.キング
B.B King - Live in Stockholm 1974
http://www.youtube.com/watch?v=9vn-xKyVwfQ

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
Red Hot Chili Peppers at Green Fest - Intro Jam
http://www.youtube.com/watch?v=sHswOjTbnCE

ルー・リード
Lou Reed - Metal Machine Music
http://www.youtube.com/watch?v=YyF7g-dHO7g

レディオヘッド
Radiohead - Identikit 2012-03-03 Houston TX US
http://www.youtube.com/watch?v=snp06q1tQ48

フェラ・クティ
Fela Kuti - Confusion
http://www.youtube.com/watch?v=yMgA22Biwfg

◆好きな映画
『コントロール』(2007 アメリカ)
『こわれゆく女』(1974 アメリカ)
『オープニングナイト』(1978 アメリカ)

◆幼い頃に好きだった映画
『チャイルド・プレイ』シリーズ(1988〜 アメリカ)
『エイリアン』(1979 アメリカ)

◆好きな書籍
『水と水が出会うところ』レイモンド・チャンドラー
『人生のちょっとした煩い』グレイス・ペイリー
『熊を放つ』ジョン・アーヴィング
『村上朝日堂』村上春樹
『橋の上の天使』ジョン・チーヴァー 

◆毎日観ているWebサイト(一部)
Bleep
https://bleep.com/

IDIOT COMPUTER -RADIOHEAD FANSITE IN JAPAN
http://idiotcomputer.jp/

ハニカム
http://www.honeyee.com/

◆鈴木啓太が選ぶ音楽 
The League of Extraordinary Gentlemen - Merry-Go-Round
http://www.youtube.com/watch?v=tFJf3oL_OQY

Four Tet - Ocoras
http://www.youtube.com/watch?v=LcqSnO9CNTs

Koreless - MTI
http://www.youtube.com/watch?v=K4lvqf79c84

Jacques Green - Another Girl
http://www.youtube.com/watch?v=1IBpMuC-7BQ

GOOD GIRLS - DESIGNER MUSIC
http://www.youtube.com/watch?v=8hQG5ZZ8oY8

◆鈴木啓太のブログ
http://95minutes.tumblr.com/

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■ 旅日記【ロケットの窓際】 001 大阪
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 独居房のような部屋から通天閣が見える。賑々しさの裏側の、西成の安宿だ。
幹線道路の向かいには職業安定所があり、朝ともなれば仕事にありつくために
日雇い労働者が集まってくる。道を歩けばふいに小便臭いすえた臭いに襲われ
る。自動販売機では見たこともないようなメーカーの見たこともないような飲
料が、驚くほど安い値段で売られている。

 大阪の中心近くにあって、ぽっかりと取り残された真空地帯のような街だ。
最寄りの新今宮駅には複数の路線が乗り入れていて、利用客はとても多い。一
日あたりの乗降客数は、全国でも屈指のはずだ。でもそのほとんど全ては階段
を降りず、そのまま別の路線に乗り換えてゆく。階段を降りたが最後、そこは
別世界なのだ。

 物好きな欧米の貧乏旅行者たちが近年、ここに集まるようになったという。
いくつかある理由のひとつは〈安全なはずの日本では珍しくスリルが味わえる
場所だから〉だそうだ。まったく理解ができない。ぼくはそんなこと、少しも
味わいたくはない。エレベーターの壁にでかでかと「下着でウロウロ禁止」と
書かれていたり、共同浴場の脱衣所に「他人の服をまさぐる人がいます。すぐ
フロントに通報を!」と書かれている宿になど、理由もなしに泊まりたくもな
い。

 でも理由が一つだけあった。それが、欧米の旅行者たちに唯一同感できると
ころだ。安いのだ。とにかく安い。ぼくらは四畳半ひと間に二人で泊まってい
たが、それが三千円だ。一人につき千五百円。ここは本当に日本なのだろうか?

 間違いなく日本だ。ぼくはまだ、厳重に仕舞い込んだパスポートを一度も、
出してさえいない。共同浴場の湯船につかり、せわしなくちらちらと脱衣所の
ほうに目を配りながら、ぼくは何度もここは日本だと確認する。でも湯船を共
にする連中の会話から聞こえてくるのは、どう考えても中国語だった。

 もう旅は始まっているのだろうか、とぼくは考える。慌しさにまみれながら
東京を後にして、なおも慌しさは続いている。日本にいるうちにしておかなけ
ればならないことを、ぼくらはそれぞれいくつも抱えている。出発はしてしまっ
たというのに、まだ準備が終わっていない。まるでシャワーを浴びながら服を
脱いでいるようなみっともなさだ。自分の意思で旅に出るというのに、旅のほ
うがぼくらを追い立てている。路はまだ旅路に見えず、空はまだ旅空に見えな
い。全ての物事は、ふつうの先の、新しいふつうだった。そんなふつうを探し
に旅をするといえばそうなのだけど、それにしてもこれはなんという、日常的
な忙しさだろう。

 あらゆるタイムリミットをすんでのところで切り抜けながら、夜行バスに乗
り込んで、ぼくらはなおも西へ向かう。下関からフェリーで中国に渡るのだ。
まるで旅みたいじゃないか、とぼくは思う。

<続>

文・金沢寿太郎

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■ アフタートーク【ロケット逆噴射】 001
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スガ
いよいよ今週からWebサイトもオープンして、メルマガも配信。
というわけですけれども。ところで"Biotope Journal"って、読めてるのかな。
このあいだも「ビオトップ」とか言われたし。

寿太郎
だいたい英語で言ったら「バイオトープ」だからね。
そもそも我々もちゃんと読めてない。

スガ
え、英語もビオトープだと思ってた。元はドイツ語、というのはいいよね。

寿太郎
そう、ドイツ語でだけビオトープなんだったと思う。

スガ
あれ、そうだったか。じゃあバイオトープでもいいのかもしれない。

寿太郎
いまさら「バイオトープジャーナル」ってことにするの?
なんだかもう「ビオトープジャーナル」で慣れちゃってるから。
それはそれで違和感があるな。

スガ
バイオトープジャーナル。バイオ感すごい。いきもの。

寿太郎
まあいきものの話ですけどね。人間限定だけど。

スガ
ビオトープってめだかのイメージあるな。めだかの学校。

寿太郎
俺はホタルのイメージがあるけど。絶滅危惧種ですねどっちも。
もともとは生物学の用語なんですよね、生態系とかの話で。

スガ
ビオトープはぼくが本読んでて「これだ!」と。
タイトルがちょっと思い出せないんだけど…。あーあれ?

寿太郎
早く思い出せよ。記念すべき初号で何やってんだ。

スガ
『見えない次元』でした。環境世界。

寿太郎
退職してよかったんじゃないか。本の名前が思い出せないとは。
ISBNナンバーを覚えとけよ、もう。

スガ
ごめんちがった!『かくれた次元』です。
エドワード・ホールですよ。みすずの日高敏隆訳。

寿太郎
はいはい。

スガ
でもなんでこの本読んだんだっけな。
どんな世界一周なら自分として面白いと思えるかな、っていうことで、
それで空間と人の関係、みたいなことを考えてたんだと思うんだけど。

寿太郎
文化人類学の本ですよね。

スガ
わりと古典ですね。

寿太郎
人にとっての生活空間とか社会的な距離感みたいな話があった。

スガ
そうそう。

寿太郎
80年代前半ぐらいなのかな、もう古典ですね。

スガ
いやもっと前。たしか原書は60年代だったんじゃないかな。

寿太郎
あれ、そんなに昔だったのか。
でもいまだに古さを感じさせない内容ですね。

スガ
うん、やっぱり1966年。
とりかこまれた環境に、人は大きく影響されて存在している、というような。
こう書くと当たり前の話みたいだけど。

寿太郎
あと逆にその環境が、その人自身に影響されて形成されるようなところも。

スガ
そうそう。いきものは環境世界をつくる。
で、つくった環境世界にしばられて生きている、という循環というか。

寿太郎
社会化ということの重要な一側面みたいに捉えることもできるよね。
人が社会化する上で環境との相互関係はとても重要な意味を持つということ。

スガ
そうですね。ぼくがそんなこと考えてたのは
たとえば絵画でも音楽でも文章でもいいんだけど、人が創りだすものは
その人のまわりの環境というのがまずあって、
そこからの飛躍みたいなものだよな、と。
なのに環境のちがう人たちが同じものをいいと思ったりするのは
一体どういうことなんだろうとか。そういうこと。

寿太郎
まわりの環境も含めてその人の個性といえる、みたいなこと?

スガ
んー。それはそうなんだけど、人の個性にフォーカスするというよりは、
もともと興味があったのはその環境のほうで。
いろんな人がいるのは当たり前なんだけど、
たとえ趣味が似てたり通じ合うところのある人でも、
人の環境の違いというのは思いもよらないレベルだったりするというか。

寿太郎
でもそのそれぞれの「違い」は独立しているのではなくて、人の違いと環境の
違いはそれぞれ相互に影響し合っているわけでしょう。
だから環境から人が見えるし、人から環境が見えてくるというか。

スガ
もちろんそうですよ。いやだから、人だけじゃダメだ、というか。
人はいつもフォーカスされるからね。

寿太郎
うん、だから「周りの環境も含めて個性」と言ったのはそういう意味で
周りの環境にも注意しないとなかなかその人物は見えてこないよ、
という意味ですよね。

スガ
うーん、いやそれはそれでいいんだけど、あー、ちょっとわかった。
たぶん最終的にみてるところがぼくは人よりも、
人がつくった環境なのかもしれない。
家とか絵画とかデザインとか。人あんまり興味ないというか。

寿太郎
ふうん。

スガ
もちろんフォーカスの比重の問題ですけど。
もう人はいいよ、というか。

寿太郎
まあ人に興味ないですよね。
宿の部屋でうるさく音立てたりとか、隣で寝てる人に興味ないですよね。

スガ
うん。写真とかは人撮るのおもしろいとおもうけどね。

寿太郎
厳密な意味では被写体を人として見てないんじゃないか、そのとき。

スガ
人としてみるの苦手だからねぼくは。
いやだからぼくの話はいいから。

寿太郎
おれは人間をやめるぞ!ジョジョーッ!!

スガ
というわけですね。

寿太郎
何の話でしたっけ。

スガ
Biotope Journal のネーミングのはなしでしたけど
そろそろ退屈ロケットのはなしでもしましょうかね。

寿太郎
名前の由来ね、最近もよく出会った人に聞かれますけどね。
正直あんまりよく覚えていない。

スガ
きかれるよね。えっと。2人でたくさんネーミング案を持ってきて
退屈をいれませんか、と。

寿太郎
退屈というのは最初に出たキーワードでしたね。

スガ
『暇と退屈の倫理学』読んでからちょっとした退屈ブームがありましたな。

寿太郎
そんなのあったのか。

スガ
いやぼくの中で。でもないか。
紀伊國屋で退屈のフェアやっててひとりで熱くなってた気がする。

寿太郎
そのブームに乗っかってればわりと退屈しないんじゃないですか。

スガ
ぼくはぜんぜん退屈とかしたことない人だから。
寿太郎くんは退屈しますか?

寿太郎
退屈しないねえ。

スガ
ねえ。

寿太郎
鬱屈するけど退屈はしない。

スガ
鬱屈w 鬱屈してるよね、寿太郎くんは。
鬱屈して卑屈な笑いを浮かべてる。

寿太郎
韻踏みたいだけだろ。
卑屈ではないぞ怪しいかもしれないが。

スガ
笑顔がなんかくらーいかんじの。ニタ〜、みたいな時あるよ。

寿太郎
いやだから僕の話はいいから。

スガ
ふむ。退屈のはなしは、えーとなんだっけなぁ。

寿太郎
繰り返される日常とか、終わりなき日常とか、そういう話ですよ。
普通の日常の環境みたいな。

スガ
そう思い出してきた。
退屈の片鱗を感じるところから、人の創意は生まれてるよな、とか
まあ退屈、というのはすべての出発点である、というね。

寿太郎
その人にとって普通であるとか日常的であるとか、まあそう言い換えてもいい
ですね。特別なひらめきのようなものから創意が生まれるというより、
むしろその人にとってのあたりまえの環境の中から創意が生まれてくるという
ようなお話ですね。

スガ
そういうこと。それでBiotopeともつながる。
日常である環境、つまりBiotopeからすべての創意は生まれてきて、またあらた
な環境、日常が作られる、ていうね

寿太郎
日常の再生産の過程に創造行為みたいなのがある、みたいなことですね。
ああどうも硬すぎる。

スガ
硬いのはしょうがない。きみふだんからガチガチに硬いから。

寿太郎
きみは緩すぎるところがあるけどね。
まあいいんじゃないすか。

スガ
いいとおもいます。
また来週。

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編集後記:退屈なしめくくり

Biotope Journal Weekly第1号、いかがだったでしょうか。
これからもWebは毎日更新、メールマガジンは毎週日曜日の夜に発行予定。
お楽しみいただければうれしいです。

ただなにせ海外です。これから中央アジアの方に向かうと、
ネット回線がつながらないとか停電とか、そういうことも、
あるかもしれません。(今いる中国も、なかなかヘビーな環境です)
Webの更新・メールマガジンの配信ができなくなることを避けるため、
ぼくたちは日夜戦いを続けますが、万が一、という時には、
大目に見ていただけるとうれしいです。

さて、メールマガジンの購読の登録をしてくれたみなさまに、
ひとつ、お伝えしておきたいことがあります。

無料で発行をはじめたこのメールマガジンですが、
実は大胆にも、将来的には有料で発行したいと考えております。
できれば、無料版は何らかの形で残しながら、
すこしパワーアップさせた有料版を発行を…! と思っておりますが、
まだどうなるかわからない、というのが正直なところです。
はじまったばかりのこのプロジェクト、あたたかく
見守っていただければ幸いです。

スガタカシ

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編集・発行:退屈ロケット

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