スガ
寒いね。
寿太郎
寒い。チェコ終盤からついに本格的に雪な感じになってきましたね。ちょうど同じ頃、東京でもえらい雪が降ってたみたいだけど。
スガ
ああ東京の雪、盛り上がってたね。雪はブルガリアとかでも降ってたけど、でもここの寒さはちょっと格別。ゆるぎなく毎日曇ってるし。
寿太郎
そうね。でもちょっと調べたところだと、曇ってるおかげで致命的な冷え込みかたにならないみたいだよ。
スガ
あ、そうなの。放射冷却がない、とかそういうこと。てことは例年はもっと天気がいい代わりにもっと寒い、とか?
寿太郎
いや、例年曇ってるのだと。あ、ここがどこか言ってなかったですね。ポーランドです。
スガ
そうポーランドのクラクフ。まぁ氷点下4度とかそれくらいだからね。致命的ではないかも。曇り空の下、生きてゆきましょう。
寿太郎
もうここより北はなさそうですからね。少なくともこの冬は。というわけで新年2回目でしたが。
スガ
アイリン様ですよ。
なんかね、対面した時からもうオーラがすごくて、様づけで呼ばせてくださいという。
寿太郎
最初対面したのは、たしかステージ直前みたいなときか。というか、もうひとつのステージが終わった直後だったっぽいね。
スガ
あー、そうか。そうだね。
「今ちょっとだけ時間とれるから控え室来て」って言われていってみたら、なんかこう、バーンと。オーラもスゴいしおっぱいも大きいし。
寿太郎
「おおう、おっ、おおー」とか言いながら写真撮ってましたねスガくんは。
スガ
いやほんとそんな感じ。会った瞬間にガツンとやられて、尻尾巻いて逃げ出したくなるような。
寿太郎
たしかに、こういうタイプのプロフェッショナルの人は初めてだったからね、考えてみれば。
スガ
足腰がふるえそうになるのを抑えながら「とにかく撮るんだ! 立ち向かえ!」みたいな感じでした。
寿太郎
それは僕はインタビューのときそんな感じでしたね。アイリン様は優しいんだけど、あのマネージャーが早く終われとプレッシャーかけてくるし。
スガ
寿太郎くんもぼくに劣らずいっぱいいっぱいでしたよね。今回は今まででたぶん一番インタビュー時間が限られていて。しかも通訳してくれたそのマネージャー、話が微妙に通じない。
寿太郎
彼だけじゃなくて、旅行会社のあのヌケサク氏も、みんながみんな話が通じない。というか、どれだけ説明してもこちらの意図がわかっていなかったフシがあるね。
スガ
うーむ。インタビュー1時間OKといってたのに15分くらいで「さあそろそろ!」みたいな感じだったしね。
寿太郎
アイリン様自身はそれなりにきちんと把握してくれていたっぽいのが救いだったけど。ただ今回難しかったのは、彼女が初めて、英語も日本語も通じないインタビュイーだったんですね。
スガ
そうだね。
寿太郎
あ、キーちゃんがいたか。でも彼は英語わかるし、なにしろ4人がかりで通訳していただいたから。
スガ
通訳4人体制とか、なんという贅沢w
寿太郎
とにかくかつてなくハードなインタビューでした。
スガ
終わったときはぐったり。まぁでもおかげでいい画は撮れたし、トルコでベリーダンサーを取材できたのもよかったけど。ただできれば、やっぱり彼女の家は見たかったなぁ。
寿太郎
そうですね。彼女自身と交渉ができればよかったのだけど、すぐに周りの連中がエクストラマネー払えとか言い出すからむずかしかったですね色々と。
スガ
そうなんだよね。周りに止められてしまって、ちょっとどうしようもなかった。
彼女が住んでいるAVANOSの街まで行って写真(5日目スイミング)を撮って来たりはしたけれども。
寿太郎
そうだったね。でもアイリン様のプロフェッショナリズムにはかなり感心させられました。イスラム文化の中では例外的に華やかな業界だし、しかも近年ツーリスティックになりすぎてしまってわりと骨抜き気味なのかと思ってたら、とんでもない。めちゃくちゃ高い意識の人でした。宗教的なこと含めて。
スガ
そうね。正直トルコのベリーダンサーって、もうかたちだけしか残っていないものだと思ってた。いちおう職業としてはダンサーだけど、今時のことにしか興味がないのが普通なのかと思ったら、彼女は本当に…
寿太郎
もう過去から未来へ続いていくベリーダンスの伝統の中に身を捧げちゃってる感じだった。
スガ
うん。トルコの伝統的な部分。イスラムだとか、スーフィズムとか、そういう精神的な部分をすごく大切にしている人だったね。
寿太郎
伝統を大切に受け取るだけでなく、それを次の世代に伝えていくことまできちんと考えていた。
スガ
たぶん今回トルコで出会った人の中で、いちばん宗教的なものの力を感じる人だったかな。あ、ジハンもイスラム独特の商人哲学みたいなものを持っていたけど。
寿太郎
そうだね。もっと単純に言うと、そもそもいちばん敬虔なムスリムだね。まあジハンは独自の哲学があるからね。ビロールもビロールで独自だったけど。
スガ
でもふたりともモスクに礼拝とかほとんど行かないって言うし、お酒は好きだしね。レッドバレーに心を鎮めに行くアイリン様とはえらいちがうよ。
寿太郎
そうそう。酒飲むんだよ、トルコの男どもは。もしかするとトルコって、女性だけ敬虔なんじゃなかろうか。ジハンもお母さんは敬虔だから実家で酒飲めないって言ってたし。
スガ
言ってた。「お母さんは本当に信じてる人だから」って。お前はどうなんだよとw
寿太郎
イスラムは正しいあり方を教えてくれるけれど、その通りにするかどうかは自由、とか言ってたね。ほんとかよ。それトルコだけじゃないのかよ、っていう。
スガ
あ、ちょっと来週の「空間と人」の話とかぶるかもしれないけど、国民的英雄のアタテュルクが酒好きだったから、みんな悪びれず酒飲むようになったんだ、みたいな話もあるみたいね。敬虔なムスリムの人たちはそれもあってアタテュルクが嫌いだと。
寿太郎
はいはい、俗世のヒーローのほうになびくというかね。そんなわけで、アジアの反対側の端っこのトルコもひとまず、次回「空間と人」でおしまいですね。
スガ
そうですね、また来週。