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こんばんは。退屈ロケットのスガタカシです。本日はむせるような暑い日差し、エジプトの首都・カイロよりお送りします。今週は木曜日から、メールマガジン有料版発行とCAMPFIREでのご支援募集のお知らせをはじめたのですが、ここ数日のうち、思ってもみないほど多くのご支援をいただいて、ほんとうにありがたいことだなぁ…と、しみじみ。かみしめるような気持ちでいます。

もちろん、お金を支援していただけていることも単純にうれしいのですが、もう一つ嬉しいのがCAMPFIREでパトロンになってくださる方のコメントだったりします。ふだん Biotope Journal はそれほどたくさんのご意見やコメントを頂けるわけではないだけに、パトロンになっていただいた方のコメントを見ていると、「Biotope Journal はこれからこっちの方に行くといいんじゃないか」というのも見えてきて、とても励みになっています。(もちろんBiotope Journalは、CAMPFIREを通じてでなくとも、メールやTwitter ハッシュタグ #BiotopeJournalFacebookページで、いつでもご意見ご感想、お待ちしています。ご意見をいただけるとほんとうに、励みになるのです)

さて、今週のBiotope Journalはイスラエルの首都、エルサレムの2週目。「平和の家」に住むイブラヒムの日常をお届けします。それでは今週もWebの記事とあわせて、どうぞお楽しみください!

ベツレヘムの分離壁

Biotope Journal リポート #030|イブラヒム

Web "Biotope Journal" イブラヒム編 エルサレム オリーブ山の平和の家で

>〈イブラヒムの家〉 Ibrahim, in Jerusalem, Israel 1/7
>〈マッサージ〉Ibrahim, in Jerusalem, Israel 2/7
>〈国籍〉Ibrahim, in Jerusalem, Israel 3/7
>〈最終絶叫計画〉 Ibrahim, in Jerusalem, Israel 4/7
>〈分離壁〉Ibrahim, in Jerusalem, Israel 5/7
>〈ユダヤ〉Ibrahim, in Jerusalem, Israel 6/7
>〈恋人〉Ibrahim, in Jerusalem, Israel 7/7

Each of us is, more or less, an egg. Each of us is a unique, irreplaceable soul enclosed in a fragile shell. This is true of me, and it is true of each of you. And each of us, to a greater or lesser degree, is confronting a high, solid wall. The wall has a name: It is The System. The System is supposed to protect us, but sometimes it takes on a life of its own, and then it begins to kill us and cause us to kill others - coldly, efficiently, systematically.

2009 村上春樹 エルサレム賞受賞時のスピーチ*より)

バンクシーの有名なグラフィティが描かれた、ガソリンスタンド脇の壁。周囲は意外にものどかな雰囲気
エルサレムの旧市街からやや東に、オリーブ山という名で知られた、山というにはいささか小さく丘というには急勾配すぎる場所がある。中腹にも家々が立ち並び、いくつかのイエス・キリストゆかりの史跡で知られる*この場所は、生活の場としては現在はおもにムスリムの人びとの地域となっている。
「イブラヒムの家」
「イブラヒムの家(イブラヒム・ピース・ハウス)」とは、ここに暮らす人びと、そして貧乏旅行者たちにとってよく知られた名だ。宿泊施設といえばそうだが、通常の宿とはまったく異なった「家」。ここには、一泊あたりの宿泊費というものは存在しない。訪れる人びとは皆、寄付という形で感謝の気持ちを込め、箱の中にいくらかの金額を投入する。その額は特に決まっているわけではない。しかし、だいたいの相場を考えても、物価の恐ろしく高いイスラエルにおいては安上がりになる。自然、バックパッカーたちが多く集まってくる。特に日本人旅行者によく知られ、さながら日本人宿のような様相を呈することもしばしばだ。
「イブラヒムの家」名物、トマトとじゃがいもの煮込み。薄味なので味付けは各自調節
ここを訪れるのは、単なる旅行者たちだけではない。なにしろエルサレムは三つの宗教の聖地だ。ユダヤ教徒も、キリスト教徒も、そしてイスラム教徒も、巡礼のためにエルサレムを訪れ、ここに泊まる。イブラヒムはどんな国のどんな民族の、どんな宗教を信じる者も拒まない。彼の口癖は"welcome"そして"eat"と"drink"。台所にあるものを使っていいか、飲み食いしていいかと尋ねると、"Don't ask!"とくる。自分の家のように振る舞え、というのが、ベドウィンの出身であるかれのもてなしの哲学だ。
Donation Box 「イブラヒムの家を維持するためにはは月々4000ドルが必要」

ここの運営のためには、ロシア人やアメリカ人といった様々な人びとが働いている。働いているというより、半ば暮らしている。一緒に食卓を囲んでいると、宿泊者との境目などなくなってしまうからだ。机はいつもベジタリアン・メニューの食事で満たされ、それらを頬張りながら、英語で、アラビア語で、あるいはロシア語で会話が弾む。

そんな中にひとり、スマーフの可愛らしいTシャツを着て、ご機嫌でケーキを焼いている青年がいる。彼もまた、人びとからイブラヒムと呼ばれている。このヤング・イブラヒムこそ、老イブラヒムの30人以上を数える孫のひとり。孫の中で唯一、現在ここを手伝っている人物だ。

「イブラヒムの家」1階

平和の家の群像

黒いビニール袋の中で出産を待つ
子猫が数匹だ。ここ数日姿が見えないと思ったら、今朝になって姿を表し、親猫がまた新たに子どもを産みはじめた。出産準備のために姿を隠していたのだろうか。ゆっくりと時間をかけて、一匹ずつ産み落とし、その体を丁寧に舐めてやっている。

イブラヒムにインタビューをしていると、ウクライナから母親と一緒にやってきているセラフィム少年がたびたびやってきて、じゃれつきながら出産の経過を教えてくれる。「もう2匹も産んだよ!」と彼は興奮気味に語る。イブラヒムはにこにこして彼に構ってやる。この子はとにかく元気だ。昨日は、日本人旅行者たちが紙飛行機をいくつもせがまれて、総出で折るはめになってしまった。試行錯誤を重ねて突き刺さるように鋭く飛ぶよう改造された紙飛行機たち。これらをセラフィム少年にぶつけられていたのも、あわれイブラヒムであった。

ウクライナから来た少年セラフィム
東方教会のイースター*は5月5日。それに合わせて、彼らのようなロシア系の人びとが、エルサレムには多く訪れる。ユダヤ人もいればムスリムもいる。日本人も韓国人も中国人もいる。老イブラヒムは、ときには自ら料理の腕をふるってそれらの人びとをもてなす。ユーモアを込めて会話を交わす。そんなふうにして、考えや気持ちを共有しようと務めるのだ。そんな祖父の姿勢が、イブラヒムは好きだ。そんな温かな空気が常にあるこの家のことが好きだ。
いましも忍術を放とうとするセラフィム(『Naruto』に夢中)と自慢の肉体でそれを封じるイブラヒム
この家のアイデアは、もともとは老イブラヒムの両親、つまりイブラヒムの曾祖父母からもたらされたものだった。客人をもてなすことは、ベドウィン*の伝統的なしきたりでもある。伝統を守りながら、現代に合うやり方で、けれども堅苦しくなく。そんなふうにこの家は運営され、もう30年以上になる。「祖父は、テロをする必要なんかないんだ、まったく違う方法で平和を実現できるんだ、ということを示しているんだ」とイブラヒムは語る。実際、祖父は今もしょっちゅう民間の小競り合いの現場に出かけていっては、当人たちをなだめ、場を治めている。
老イブラヒム。近所のパレスチナ人の若者たちにも慕われているようだった。

老イブラヒムはベドウィンだが、自分はもはやベドウィンではない、とイブラヒムは言う。どうもベドウィンという言葉は、民族的な血縁というよりも、その暮らしぶりに対して使われるようだ。つまり「ノマド」という言葉と似ているのかもしれない。イブラヒムは定住しているし、家畜を育てるような暮らしをしてきたわけではない。加えて彼の母方のルーツは、ベドウィンにはないのだ。

それでも、ベドウィンのもてなしの伝統は、彼の中にもしっかりと息づいている。彼が今大学で専攻しているのは、フィジカル・セラピー、つまり平たく言えばマッサージだ。西洋から東洋まで各国のスタイルを学んでいる彼は、将来はプロのマッサージ師として活動したいのだという。人びとを癒すこと、人びとに触れてマッサージをすることで、その人びとの内なる癒しのエネルギーを引き出すこと。これが彼なりの「もてなし」なのだろう。

イブラヒムの話を聞いたのは、西日射す踊り場

国籍を持たないということ

イブラヒムは国籍を持たない*。彼の家族は、皆同じだ。そういえば老イブラヒムも、自分はパスポートを持たずに世界各国を旅してきた、と話してくれた。彼はあまり細かいことを丁寧に説明してくれるタイプではないから、その意味するところがつかめなかったのだけど、ヤング・イブラヒムの説明を聞けばその背景が理解できる。ここには、イスラエルとパレスチナの間にある複雑な事情が影響している。
様々な写真が飾られる「イブラヒムの家」1階

現在この地には、イスラエルという国とパレスチナという国がともに存在している*。ともにエルサレムを首都であると主張しているが、中東戦争以来、現状エルサレムを支配しているのはイスラエルだ。したがって、ここに住むパレスチナ人の彼らが国籍を持たないという状況が発生しているのだ。中には、他国へ移民してその地の国籍を取得する者もいる。ヨルダンへ行くものもいれば、アメリカに行く者もいる(イブラヒムの親族にも、何人かこういう人がいる)。あるいはイスラエル国籍を取得するパレスチナ人もいる。でも今ここに暮らしているイブラヒムの家族は、これらの道を選ぶことはしなかった。そのため、結果として彼らはどの国家にも属さないという状況になっているのだ。イブラヒムの見せてくれた住民としてのIDカードには、国籍の項目への記載がなく、ただ「*******」と示されているのみだった。そのうえ顔写真は現在よりもずいぶん細く、まるで別人のようだ。ただでさえ面倒ごとに巻き込まれやすい立場なのだから、顔写真ぐらい誤解を受けにくいものにすればいいのに、とも思う。でも彼は、ここぞとばかりにこう言って笑う。「カメラが壊れてたんだよ」。

理想を追うだけでは済まないこともある。この家で働いていても、ときには悲しい思いをすることがある。それはやはり、民族間や宗教間の対立だ。通常、ここに集まる様々な宗教や民族の人びとは、互いを尊重し合い、穏やかに会話を交わしている。でも時には行き違いが起こり、激しい言い争いに発展してしまうことになる。そうなると互いにコミュニケーションなんてできないんだ、と彼は言う。叫ぶように言い争うのはほんとうにクレイジーだし、そんなネガティブなエネルギーは何の役にも立たない、と彼はため息をつく。

息をきらせて、セラフィム少年が階段を駆け上がってくる。息を整えるのももどかしく、「あの猫、4匹も産んだよ!」

老イブラヒム自ら、大量の食事を作ることもしばしば。"Eat!"叫ぶだみ声も豪快なら、その作る料理も豪快そのもの

アメリカ文化はやっぱり人気

イスラエルとパレスチナ、という対立を考えてみると、イスラエルの背後にいる親玉はもちろん、アメリカだ。ではこのあたりのムスリムの若者たちは、アメリカに対して良い印象がないのではないか、という気もする。でも、政治的なことはともかくとして、文化的な面でアメリカが好きな若者はとても多い。

「イブラヒムの家」階段部分
イブラヒムも、アメリカのポップ・ソングが好きだ。ヒット・チャートに載っているような、ごくごく一般的なもの。たとえばリアーナとか、ビヨンセだとか、レディー・ガガだとか。どうも彼は、女性アーティストが特に好きなようだ。加えて、ハリウッドの映画だ。最近好きなタイトルは、"Scary Movie" というもの。ずいぶん取ってつけたようなタイトルだが、これは日本で『最終絶叫計画』*という邦題となって公開された映画だ。これはホラー映画でなく、いわばホラーをパロディ化したコメディー映画だ。有名な映画のパロディをふんだんに盛り込んだこの作品はずいぶんと人気を博し、シリーズ5作目がつい先ごろ公開されたところ。シリアスなものを見たりはしないのだろうかとも思うけれど、よく考えればシリアスな状況は周囲にあふれていて、映画を見るまでもないということなのかもしれない。
「イブラヒムの家」屋上。鉄骨むき出しあたり前
「イブラヒムの家」屋上から

イブラヒムは、アメリカを訪れたこともある。パスポートは持っていないから、代わりに政府から発行される渡航証を携えて、3ヶ月の間アメリカに滞在した。その第一の目的は、アメリカの親族を訪ねることだった。一族の中には、アメリカのグリーンカード*を取得して完全に移住してしまった者もいる。こうした移民たちは、一度イスラエルを出てしまえば、再び故郷を訪れるためには旅行者として短期間滞在するよりほかないのだ。

ただ親族を訪問するだけでなく、彼はしっかりフロリダに行って、ディズニーワールド*を一週間の間堪能してきた。セラフィム少年と遊ぶときの、少年に返ったかのような様子を見ると、そのときの彼のはしゃぎぶりが目に浮かぶ。

オリーブ山の平和の家で

イブラヒムが普段暮らすのは、ピース・ハウスのほど近く、老イブラヒムが住むのと同じ建物。とはいえ、その家はいちおう別々になっている。祖父の家には、祖母とその姉妹が暮らす。その他にも次々といろんな人が顔を見せてくれるのだが、その関係性が多岐にわたりすぎてよくわからない。とにかく、大家族だ。
「イブラヒムの家」から徒歩10分程度、オリーブ山をおりるとイブラヒムの住んでいる家がある。
ここでは通常、男子が成人して家庭を持つと、独立した家を持つ。とはいえそれはしばしば、元いた家の隣に建てられるか、または単純に建て増しされる形で建てられる。いわば多世帯住宅、というわけだ。真新しく現代的なこの家の脇には、まだ工事が完了していない部分もある。いずれここにも、たとえば成人して結婚したイブラヒムのために、新たな部屋が建て増しされていくのだろう。
清潔で設備の整ったキッチン
イブラヒムは今、両親と妹たちとともに暮らしている。家自体はさほど広くはない。しかし壁紙は細かな装飾が施されて美しく、立派な応接室が備えられ、ソファが並べられている。いつでも客を迎え入れることができるように整えられたこのスタイルは、やはりベドウィンの伝統を継承したものだ。お宅にお邪魔したのは夜も遅くなってから。両親はすでに寝てしまっていたものの、イブラヒムとまったく同じ顔をした妹たちが起き出してきて、きゃっきゃとはしゃぎながら迎えてくれた。
16畳ほどもある応接間
この建物の屋上からの景色は、山の斜面に建っているだけのことはあり、なかなかのものだ。広い範囲にわたって街を見渡せることは、夜の眺めであってもよくわかる。でもその景色の中に、不自然なほどつるりとした無機質な何かが照らし出されている。壁だ。
イブラヒムの住む家の塀。カーバ神殿と岩のドームが描かれている。
壁が見えるね、と言ったとき、心なしかイブラヒムの表情が、いつもニコニコと明るい顔つきが曇ったように思えた。それで少し躊躇してしまったのだが、でも聞かねばならないことと思い、正面から尋ねてみた。率直に、あの壁についてどう思うか、と。彼の答えは一言だった。"Disgusting."
ネガティブな答えが返ってくることなどはわかりきっていたけれど、いつも柔らかな喋りかたをする彼がその言葉を使ったことには、驚かされた。憎悪をはらんだ言葉の響きが闇に消えてしまったあとで、彼は今度は悲しげなトーンで言った。「彼らは僕らのことを、ここに暮らす者として認めていないんだ」。
この種の壁はイスラエルの各地に見ることができる。ベツレヘムの壁には、バンクシーによる有名なグラフィティ・アート*も描かれている。一方でエルサレムの壁には、そうしたものは見られない。警備が厳しいからか、それともこちらが「内側」だからだろうか。ともかくイスラエル政府は、これらの壁を、国民の安全を保つためのものであるとしている。もちろん壁の周囲のパレスチナ人たちは、その「国民」には含まれない。これらの人びとは、生活圏を無慈悲な壁によってただただ分断されているのだ。

イブラヒムは最後に、小さな庭を見せてくれた。几帳面に芝が敷き詰められ、それを囲うようにして花が植えられている。まだ整えられて間もないのだろう、芝は地面に完全に馴染みきってはいないし、花の幹はどこか頼りなげだ。「これは全部僕が植えたんだ」と彼は、どこか誇らしげに教えてくれる。脇のほうには机と椅子があり、彼はしばしばここで勉強をするのだという。
彼はバラの花を一輪摘み、お土産にと渡してくれる。長期旅行にふさわしくないお土産だけれど、でも同時に、彼の思いをよく表したお土産でもあった。持ち歩くわけにも行かないから、ピース・ハウスに帰ったあとで、適当な瓶に活けておく。美しくも強く咲いているその花に、イブラヒムの小さな美しい庭が、どうか無慈悲な壁に押しつぶされてしまうことのないように、と願う。

文・金沢寿太郎

今週の参照リスト

 

《イブラヒム プロフィール》

 
名前 Ibraahim Abu El Hawa (Jr.)
国籍 なし
民族 パレスチナ人(ベドウィンを先祖に持つ)
年齢 19
職業 学生
出身地 エルサレム
在住地 エルサレム
ここはいつから? 生まれてからずっと
家族、恋人 両親、2人の妹、弟がひとり、曾祖父母、その他多くの親族、恋人はなし
自由な時間の過ごし方 映画鑑賞(アメリカのコメディ映画)、友人とテルアビブでバーベキューなど

《脚注》
◆村上春樹のエルサレム賞受賞 *1
エルサレム賞は、2年に1度の「エルサレム国際ブックフェア」において表彰される文学賞。村上春樹は2009年に、日本人として初めてこれを受賞した。イスラエル政府によるパレスチナ自治区ガザの爆撃直後だったこともあり、辞退を求める声もあったが、村上は受賞したうえでイスラエルを暗に批判するスピーチを行った。同様の姿勢をとった受賞者にはスーザン・ソンタグなどがいる。

◆オリーブ山の史跡 *2
ルカによる福音書などに、イエスが訪れたという記述がある。「主の泣かれた教会」「主の祈りの教会」「万国民の教会」など。イエスが昇天したとされる「昇天教会」は、現在はムスリムの礼拝所になっている。ちなみにイスラム教ではムハンマド以前の預言者も聖人として扱うため、イエス・キリストも聖人として扱われることがある。

◆イースター *3
復活祭と訳される、キリスト教において重要な祝日。イエス・キリストの復活を記念する日。この日付は毎年変わり、なおかつ用いる暦法の違いにより、西方教会と東方教会で日付が異なる(一致する年もある)。2013年の東方教会のイースターは例年比で非常に遅く、5月5日であった。2014年は西方・東方ともに4月20日。

◆ベドウィン*4
ベドウィンはアラブの砂漠地帯の遊牧民族を指す言葉。古くからラクダや羊の遊牧を行い、また同時に運送などの仕事にも従事してきた。ベドウィンには多くの部族が存在し、アラビア半島を中心に広範に渡って分布するが、近年では遊牧生活をやめて定住するものも増えている。

◆無国籍者 *5
国連難民高等弁務官事務所によれば、推計で1200万人以上。無国籍となる理由としては、両親の国際結婚・離婚による手続き不備による事務的なものや、国そのものの消滅などによる政治的な理由がある。イブラヒムのケースは後者。中国における、一人っ子政策による罰金逃れのために2人目以降の子どもの出生の届出がなされず無国籍児が発生するケースもあり、社会問題化している。

◆最終絶叫計画 *6
2000年公開、アメリカ。有名なホラー映画を中心に、様々な映画のパロディを織りこみ、人気を博す。その後シリーズ化され、シリーズ第5作が本年公開になったところ。

◆グリーンカード *7
アメリカ合衆国の外国人永住権、その証明書を指す通称。取得には様々な方法があり、米国市民と結婚する場合から、米国内での雇用などによるもの、さらには抽選、そして政治亡命や難民というケースがある。

◆ディズニーワールド *8
フロリダ州のオーランドにある、広大なリゾート施設群。東京ディズニーランドのモデルとなったディズニーパーク、ディズニーウォーターパークを中心とし、ゴルフコースなどのスポーツ施設なども備えている。

◆バンクシーのグラフィティ・アート *9
バンクシーは、ストリートアートを中心として活動する芸術家。イギリスのロンドンを拠点としているが、本名などのプロフィールは公表されていない。世界中の有名美術館に自作を勝手に展示するなどのパフォーマンスが話題を呼んだ。ベツレヘムのグラフィティ・アートは2007年に描かれたもの。

旅日記【ロケットの窓際】030 南京虫の恐怖

 しゃん、しゃららん、しゃん、しゃららん。リズミカルに打ち鳴らされる金属の音は、コーヒーを売り歩く男の客寄せだ。行き交う車のモーター音とクラクションをかきわけて、小気味よく耳に飛び込んでくる。もっとも、このアラビアン・スタイルのコーヒーは、店による差こそあれ、総じてさほど美味しいものとは思えない。コーヒーの香りがするショウガ湯、という趣だ。新しい地元の飲み物を見つければ一応試してはみるのだが、結局戻ってゆくのはコカ・コーラだとかペプシ・コーラだ。なにしろ、世界のどこでも間違いがない。味にほとんど変わりがない。安心の米国資本。

 コーラで流し込むのは、近所に見つけたスタンドのハンバーガーだ。焼き上げた普通のパンで薄いハンバーグと野菜を強引に挟んだというものだが、これがなかなか悪くない。挑戦心も萎えがちなだるい昼下がりには、こんな保守的なメニューで空腹を紛らわすのだ。


 窓の向こうのアンマンの喧騒を背に、付け合わせのフライド・ポテトをつまみながら、イスラエルのことを考える。中東の火種の中心に常にある国。不穏な話題ばかりが、ニュースによってもたらされる国。その国への国境は、ここから車でわずか一時間ほど。目と鼻の先と言っていい。不思議な気分だ。

 しかし、イスラエルの入国までしばらくの間、アンマンに滞在しなければならなかった。書きものや取材や、取り組むべき仕事があっただけの理由ではない。ここで僕らふたりは、揃って風邪をひいてしまったのだ。季節があっという間に夏に変わってしまうその直前のこと。この街の夜の冷え込みは、砂漠のように恐ろしく深い。厚着をしてベッドに潜り込む。いたずらに重くて、そのくせごわごわと不愉快で、ちっとも温かくない毛布に包まる。夜には朝が来るのを待ち、昼には夜が来るのを待つ。無力だ。

 さらに恐ろしいことには、ここのベッドには南京虫が出るという噂が、まことしやかに囁かれていた。それも、特定の部屋にのみ出るというのだ。何人もの旅行者から情報を集め、そして自分の部屋番号を改めて確かめてみる。間違いない。この部屋だ。

 南京虫というのは、安宿を渡り歩く貧乏旅行者にとっては、「マラリア」だとか「首絞め強盗」と同じぐらいに恐れられる恐怖の虫だ。奴らはだいたいの場合、木製のベッドそのものに住み着いている。そして夜がやってくれば寝ている者の体を這い回り、少し進んでは咬みついて血を吸い、ということを繰り返す。結果、肌には南京虫の移動ルートがご丁寧に記録されることになる。蚊をしのぐほどの猛烈なかゆみは 1~2週間ほども続き、場合によってはその跡は 1ヶ月も2 ヶ月も残ってしまう。日本ではほぼ絶滅している種だが、東南アジアやインド、中東、アフリカなどの安宿では頻繁に報告される。これらの情報はあっという間に旅行客の間を駆け巡るため、宿にとっては死活問題となる場合もある。しかし南京虫によって宿がつぶれて誰かが路頭に迷おうがそんなことは知ったことではない、南京虫が出るようなベッドに客を寝かせる行為が万死に値するのだから、という気分にさえなってしまう。南京虫の恐怖は、かくも人間を冷酷にさせるのだ。

 奴らのおぞましい姿を確認したのは、まさに翌日の早朝にチェックアウトしてイスラエルへ向かおうというその夜のことだった。首筋に不穏な気配を察知してさっと捕まえたところ、それが奴だったのだ。今回の旅行、八ヶ月目にして初お目見えだ。結局その夜はまんじりともせずに過ごすことになり、翌日は寝不足に悩まされることになったのだが、ともかく被害をすんでのところで食い止めることができたのはなによりだった。


 時刻は早朝、六時半だ。寝不足のままタクシーに乗り込み、死海を横目に、国境へ向かう。これほど早く出かけねばならなかったのも、その日が金曜日だったためだ。金曜日には、国境は午後には閉まってしまう。イスラム教の影響であり、ユダヤ教の影響でもあるのだろう。七時台にたどり着いた国境は、すでに人びとでごった返していた。

 イスラエルへの国境越えは厄介だという話はよく知られているのだが、やや時間がかかったことを別にすれば、ほとんど何の問題もなく入国することができた。エルサレム市内までのシャトルバスに、さっそく 10ユーロも取られる。圧倒的に物価が上がったことを実感する。エルサレムに着けば、今度は地元のアラブ・バスに乗って「イブラヒムの家」を目指す。バスの運転手も乗客も、皆この家のことを知っている。イブラヒムの家に行くのか、それは素晴らしいことだ、という調子だ。

 ほんとうに個人の家のように建っているイブラヒムの家に辿り着き、恐る恐る玄関を覗き込んでみると、手伝いの女性がさっそくこちらに気付き、「ウェルカム!」と迎えてくれる。続いて現れたイブラヒム老人も、「ウェルカム!」だ。何泊するのか、何人だ、と言う質問もない。さあ座れ、茶を飲め、腹は減っていないか、なんでも好きに食べるといい。いささか圧倒されながらも、ありがたく昼食にありつく。

 この温かい歓迎の中に身を沈めてしまいたいところだが、そうはいかない。この日は金曜日。エルサレム旧市街の「嘆きの壁」には、正装のユダヤ人たちが集まってくるのだ。その光景をひと目見ようと、荷物を置いて再び街へと引き返す。

 嘆きの壁を見渡せる高台から、ぼんやりとその光景を眺める。黒いシルクハットに黒いロングコートの男たちが次々に集まり、広場を真っ黒に染めていく。それを夕日が赤く染める。その現実離れした光景をぼんやり眺めていると、やがて視界に眠気が流れ込んでくる。ここは聖地、エルサレム。けれども、そんな感慨に先んじて、現実感のなさが僕の脳みそを麻痺させていった。

アフタートーク【ロケット逆噴射】030

スガ
今週はいよいよCAMPFIREのご支援募集をはじめたわけだけど!

寿太郎
はい。

スガ
ちょっとねえ。これ、スゴイことになってますよ。

寿太郎
予想を遥かに超える勢いで、皆さまにご支援いただきまして。

スガ
ほんとうに。はじめる前はけっこう不安で、ぜんぜん集まらなかったらどうしようとか思っていたんだけど。
公開から4日めの現在で50万円を超えるご支援をいただいて、目標額の半分には到達。TwitterとかFacebookで応援してくださる方もたくさんいて、ほんとうにありがたいことです。それに、ダメ元でリターンを作った高額の支援を選んでくださる方もけっこういて、じつは正直、びっくりしてます。

寿太郎
1万5000円ぐらいまでのご支援は、ただただ感謝の気持ちなのだけど、3万だの5万だの高額の支援となると、それを通り越してなんか「えっ、いいんですか」という驚きと申し訳なさと感謝が入り混じったような気持ちになりますね。自分でリターン金額設定したくせに。ともあれ、本当にありがとうございます。

スガ
いまさらだけど、お金だしてもらうというのは、なにかこう、ずしりとくるよね。CAMPFIRE関係ではみなさんから質問もたくさん頂いているので、今日のアフタートーク後半で触れるとしまして。ご支援募集は6/17まで続きますので、引き続き!

寿太郎
お友達もお誘い合わせのうえ、どうぞよろしくお願いいたします。

今週はエジプト・カイロのホテルから。手動扉のエレベータ、旅が始まって以来一番のオンボロです。

スガ
…ということで、今週はエルサレム2人めのイブラヒムなわけだけど。

寿太郎
はい。先週はユダヤ人のヨセフで、今週のイブラヒムはパレスチナ人。

スガ
○○人で分けるとそういうことになるのか。
でもイブラヒムは「イブラヒムの家」という、すごく特殊な場所のひとだし、英語もとてもうまいしで、ふつうに接しているとパレスチナ人ということを意識することもあまりなかったんだけど。

寿太郎
そもそもあそこの家の雰囲気そのものが、僕らに対しても、自分が外国人だってことを意識させないからね。パレスチナ人ユダヤ人アメリカ人ロシア人ウクライナ人中国人韓国人日本人、みんなごちゃごちゃで楽しくやっていた。

スガ
そうね。そうそう、ごはん食べ放題だしお茶飲み放題だし、宿代は決まっていないし。ああいうところがなんとかかんとか30年も続いているのは、ちょっとした奇跡だよね。イスラエル政府にはかなりお金を取られて、金銭的にかなりきびしいという話だけど。それでも爺ちゃんのイブラヒムも若い方のイブラヒムも、悲壮な感じは全然なくて。

寿太郎
イスラエル政府には(イブラヒムの立場からすると)不当な感じで罰金を徴収されたりしているみたいだね。政府には嫌われてると。悲壮な感じはないけれど、お金が大変なのはよく伝わってきた。そういえばピース・ハウスのウェブサイトでもドネーションの募集をしていました。「○○ドル集まるとトイレを改装できる」とか、リターンのようなものもあって。シンパシーというかなんというか。

スガ
これ見ると一日の食費70ドルとか、やっぱりなかなか大変なんだ。トイレとかもぼろぼろだったしね。
こう言うと何だけど、世界まわっていると、僕たち以上に金銭的に困っている人は山ほどいるじゃない。そういう人をよく見るせいもあるし、僕たち自身がお金に困って寄付をお願いしたりしていることもあるけど、旅に出てからなんというか、「金は天下のまわりもの」的感覚が、前より強くなってきたような気がしてて。まぁぼくは前からわりと財布の紐はゆるい方なのかもしれないけど。

寿太郎
ゆるいのはいいけど、CAMPFIREがサクセスしたらご支援いただいた分については慎重にやってくださいね。
で、金は天下のまわりものかもしれないけど、そのまわりかたがとてもいびつで偏っているという印象を受けることが僕は多いです。イスラエルは庶民レベルではべつに全然豊かな国ではないのに、物価はべらぼうに高い。この旅で初めて日本より高い国を経験したと思うけど、たとえば500mlのコーラのペットボトルが日本円で200円以上する。もちろんこの原因は、主としてイスラエル政府にあるわけだけど。

スガ
イスラエルの物価の高さはほんとうに異常な感じ。でも、ぼくらが旅行者として滞在していて困ったというのは置いておくと、あそこは高い物価の中でもふつうの人たちの生活がどうにか回っているようだったのがおもしろいというか、一応暮らせていけてるということは、それだけ収入もあるということじゃない。そのあたり、もうすこし取材出来ればよかったんだけど。

寿太郎
いや、あの異常な物価ではとても生活できない、という市民の不満はしばしば爆発してますよ。デモで抗議の焼身自殺までする人もいた、というニュースもあった。兵役関連の各種控除だとか手当てみたいのが充実してて、それで軍事関連の人はわりとやっていけるということは聞きました。とりあえず知識としてはそんなとこで。でも実際に軍隊の人とかと話せるとよかったけれど。

スガ
ああそうなんだ、なるほどね。かなりやばいバランスの中でなんとか成り立っているというか、成り立っていないというか。でもだとすると、イブラヒムの家もふくめて、あそこに住んでいるパレスチナの人たちは経済的にも相当大変ということだよね。それでもあそこに住み続けていて、その国が彼らの生活を苦しめているということを考えると、国とか故郷って、いったい何なのか、という。

寿太郎
「金は天下のまわりもの」でふと思い出したのだけど、ウェブ上にはたとえば「これこれの企業はイスラエルを支援しています、会長がバリバリのシオニストです、ぜひボイコットしましょう」みたいな企業リストがあったりするよね。あえてリンクを貼ることはしないけれど、そこにはマクドナルド、スターバックス、ネスレなどの名だたる大企業の名前がある。でもそこらへんはともかく、マイクロソフト、インテルとか言われると、それボイコットしたら生活できねえよっていうw あとディズニーもあったけど、イブラヒムとか普通にディズニーワールドで楽しんでたりしたのが面白い。

スガ
例えば宝くじであたった1万円も汗水たらして稼いだ1万円も等価値という身も蓋もない話が経済学の基本だけど、なんだかそれを思い出します。お金になってしまうと意味が剥奪されて、貨幣価値だけが残ってしまうというのが原則だけど、でも意外と、自分のお金くらい好きなお店とか、応援したい人とかに使いたい、と思うわけで。イブラヒムはディズニーでほんとに楽しんだんだろうし、いいんじゃないのw
ところで話は変わるけど、イブラヒムの家にはホントはもっと写真撮りたい人たちがいたんだよね。

寿太郎
はいはい。写真に写ってない人たち、いろいろといますね。

スガ
そうそう、ロシア人のアナとその家族とか。
彼女たちはなんだか宗教的に写真がノーだとかで、日本語教えたりけっこう親しくなったんだけど、結局、写真は撮らせてもらえなかった。自分の写真を一枚も持っていないというから本当だと思うんだけど、正教会系はイコンの伝統もあるし、ちょっと不思議だったな。

寿太郎
うん。偶像崇拝を禁じる系の宗教なら写真NGもわかるんだけどね。いろいろ複雑な事情があるんだろう。

スガ
うん、家族ぐるみで全員写真ダメだったからね。そういう人たちもいるんだなぁ、と。

寿太郎
家族ぐるみといえば、イブラヒム一家はすごかった。どこまでが一家なのかわからないレベルに大規模だし。

スガ
日本で言うとちいさなアパートくらいの大きさの建物に、一族が別々に暮らしてるかんじ。

寿太郎
そうだね。ただ暮らしは別々だけど、家族としての一体感みたいなものは強くあるように感じた。

スガ
夜遅かったせいもあるけど、お父さんはソファで寝てるし、盲目で耳が聞こえないというおばあさんが歩き回っているし、小さい子どもたちは床で直接寝てるし、ちょっと混沌としていて、かるく面くらったな。彼らにとってはふつうのことなんだろうけど。

寿太郎
盲目で耳の聞こえないおばあさんは、老イブラヒムの奥さんの姉妹だったかな。旦那さんがいるのかどうかはわからないけど、老イブラヒムがまとめて面倒みてる感じだった。

スガ
あとアラビックにゴージャスな室内とかね。応接間がドーンとあって、廊下とか居間とかにキラキラしたものがたくさんあって、そもそも壁の素材もキラキラしてるし。お父さんの若いころの写真が額に飾られているんだけど、それもなんだかすごく背景がアラビックで。ああいう家におじゃましたのは、じつははじめてだよね。ジハンの時に見たトルコの部屋はもっとモダンな感じだったから。

若かりし頃のイブラヒムの父の写真。背景が超現実的。

寿太郎
そうだね。絵画か飾られていると思ったら、よく見てみるとなんというか、布細工のようなものだったり。いちばん目立つところにでかでかとあったのは、やっぱり岩のドームの絵だった。

スガ
そうそう、岩のドームは屋外の塀にも軽くペイントされてた。玄関のところにはメッカのカーバ神殿のおみやげだというプレートがかけられてたりね。
それから、応接間が大きいのはメルズーガのムバラクとも共通していたところ。
寿太郎
そうそう。砂漠とはもちろん環境はちがんだけど、大人数がどっかり腰掛けて卓を囲める部屋というのは、やっぱり重要なんだろうね。モロッコのノマドとアラブのベドウィンの共通点。

玄関まわりにメッカのプレートが掲げられていた

スガ
イブラヒムは晩飯のあと夜遅くまで毎日、あのぼろっとした「イブラヒムの家」でYoutubeで映画観たり友だちとPOPソングうたったりして過ごしてたけど、住んでいるのははゴージャスな家、というのが分かるとちょっと見え方がかわって。「イブラヒムの家」にいるのが好きなんだなぁ、というね。

寿太郎
そうだね。別に義務的にじゃなくて、あの家で色んな人の世話をしたりくつろいだりすることを自然に楽しんでた。一方で、家に帰ったら妹たちを可愛がってたけどね。同じ顔の妹たち。

スガ
妹たちはほんとに同じ顔で。イブラヒム自身はちょっとプリプリしててオネエぽい動きをするし、花を愛でたりはするんだけど、べつにオカマというわけではないんだよね。

寿太郎
単にかわいいものが好きなんだよね、たぶん。僕は彼のTシャツがやけに気になって。彼はスマーフのTシャツをよく着てるんだけど、僕は実は子どものころからスマーフが大好きだったので。

スガ
日本ではあまりみないスマーフ。ぼくは今回の旅行中、きみから聞いてはじめて知ったよ。

寿太郎
いいんですよ、スマーフ物語全15巻。セーラー出版刊。一時期絶版になってたけど、最近また売ってるのかな。小さなお子さんのいる読者の方もおられることだし、この場でむやみにおすすめしておきます。

スガ
ではつづいて今週のおたより。というか、今週はCAMPFIRE関係でけっこう質問いただいてるので、それにこたえるようなかたちで。ちょっと時間の都合で、行けるところまでになってしまいそうだけど。

CAMPFIRE にまつわる質問コーナー

寿太郎
FAQのようなかたちで行きましょう。ではまず、基本的なところから。

Q1.登録の仕方がよくわからないのですが?

スガ
ええとこれ実は、ぼくの母からも言われまして。

寿太郎
僕も母から言われました。

スガ
母同士、気が合うようだね。

寿太郎
恐ろしいことです。

スガ
まずCAMPFIREを通じてなんらかの支援していただくためには、CAMPFIREでアカウントを作って貰う必要があるんだけど、プロジェクトページの右側「このプロジェクトを支援」というボタンをクリックしてもらえれば、そこからアカウント作成の手続きがはじまります。

寿太郎
はい。

スガ
FacebookとかTwitterアカウントと連動させてお手軽に作ることもできるし、その辺のアカウントと連動させたくない方はもちろん新規に作ってもらうこともできます。

寿太郎
なるほど。

スガ
で、そのままリターンとか支援金額を選んでクレジットカード情報入力してもらっておしまい、だと思うのだけど。

寿太郎
クレジットカードはどの種類が使えるのかな? あと、それ以外の支払い方法は?

スガ
クレジットカードはVISAとマスターカード対応で、銀行振込とか、ほかの支払い方法はCAMPFIRE、未対応みたいです。もしどうしてもCAMPFIREの決済に困るという方は、メールでご連絡ください。

寿太郎
はい。で、次のご質問。

Q2.目標額に達しなかったらどうなるのですか?

スガ
目標額に達しなかった場合、「プロジェクト失敗」という扱いで、僕たちには1円も入らない、というのがCAMPFIREの仕組みなんですよね。ただその場合は支援いただいたお金がパトロンから引き落とされることもないので、お金が無駄になるわけではないのですけど。でももう50万円も皆さんから支援していただいるし、これでプロジェクト失敗だと申しわけなさすぎるので、すくなくとも目標額に設定した80万円には届くように、がんばるしかないな、と思っているところです。

寿太郎
Q3.逆に目標額を大幅に上回ったらどうなるのですか?

スガ
これは大幅の度合いにもよるのですけどね。
CAMPFIREの仕組みとしてはは目標額以上であればいくら高額になってもその8割が僕たちに支払われるわけですけど。今回、僕たちがあらためて試算してみて足りないとわかったのはふたり合計150万円なので、CAMPFIREとか、最近やらせてもらってるKDDIの記事とか、そのあたりの収入を全部合わせて150万円になるまでは、ぼくたちの旅費とリターンの資金にさせていただきます。
まぁもしも150万円も軽くこえるようなことがあったら、これはCAMPFIREのページに書いているように、Biotope Journal 書籍版の発行準備資金にさせてもらおうと思っています。

寿太郎
はい、では次。

Q4.「このリターンはいらない」はできますか?

スガ
えーと、これは、たとえばどういうことだろう?

寿太郎
たとえば、12000円の支援をしてくださったのだけど、そのリターンに含まれている「アフタートーク参加権」はちょっと遠慮したいなとか。30000円支援してくださったのだけど、サイトに名前は載せないで欲しいとか。そういうことです。

スガ
あ、そういうのは大丈夫です。
送ったおみやげのリターンに対して、「これはいらない」と言われたらちょっと傷つくけどね。

寿太郎
マクドナルドで「ピクルス抜いてください」みたいなことですね。これは大丈夫。「ビーフ抜いてください」ももし頼めばしてくれるらしいですよ。

スガ
それ、もうハンバーガーじゃないけどね。
で、3万円以上のリターンに設定されている「アーティストやデザイナーからの作品購入」のリターンは、僕たちが購入する前に、念のためパトロンに、写真で確認をさせてもらう予定です。「これでいいですか?」と写真を送るので、その段階で「別のに変えてほしい」というのはOKなんですけど、アーティストの作品やおみやげを送ったあとで「変えてほしい」というのは、基本的になしでお願いします。

寿太郎
はい。

スガ
あと「ささやかなおみやげ」は基本的には何が送られてくるか選べないので、そのへんも予めご了承ください、というところでしょうか。まぁ、その方の趣味嗜好が分かれば多少こちらで考えたりはあるかもしれないですけど。

寿太郎
ふむ。では次。

Q5.キャンセル・変更はできますか?

スガ
これはぼくもちょっと勘違いしていたんですけど、CAMPFIREの支援は、いちど選んでしまうと、もう支援期間終了前でも、キャンセルできないんですよね。2回以上支援することはできるけど、一度選んだ支援のキャンセルやリターンの変更はできない
なので、支援額やリターンを選ぶ時は、後悔しないように、よく考えてもらってからのほうがいいかもしれません。

寿太郎
そうですね、また来週。

今週の作業めし。シュワルマ(ケバブ)サンド9£Eとピクルス3.5£E。合計約190円弱。

編集後記:退屈なしめくくり

メールマガジン配信の時間帯が最近、ジリジリ遅くなっていることにお気づきでしょうか。少なくとも日本時間では、たびたび日付をまたいでしまっているのですが、え、寝ているから気づかない? …だといいのですけど。や、よくないですか。有料版発行とか言ってるくせに、ありえない! そうですよね。内心ぼくも、そう思います。時間厳守、基本ですよね。ニッポンもう、寝てますよね。

なぜこういうことが起こるのか。これはひとえにぼくの計画性の無さ…、なのは確かなのですけど、もしその他の理由を許していただけるとしたら、メールマガジンはけっこうギリギリな時間の中で、毎号地味に少しずつ、写真やキャプションを増やしたり改善を入れている、ということがあったりします。さらに有料版になったら劇的に進化! とまではいかないかもしれないですが、日本人らしくこれからも、たゆまずカイゼンしてまいりますので、どうか見守っていただければ、うれしいです。(ならまず時間を。そ、そうですよね…)

さてさて、ともあれお腹がすきました。上で紹介した作業めし、シュワルマサンドじゃ物足りないので、ここはひとつエジトチャーハン。コシャリでも、食べ行ってきます。

スガタカシ

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