スガ
今日はイースターでしたっけ?
寿太郎
いいえ、こどもの日です。
スガ
あ、そうでしたw 子どもといえばここ数日、あのウクライナの子どもの姿が見えないね。
寿太郎
そうね。どういう経緯でかはわからんけど、おかあさんと一緒に滞在してる(た?)ね。ここのイブラヒムじいさんに色々助けてもらってるみたい。で、彼らにとっては東方教会だから、今日がイースターというわけか。
スガ
一昨日くらいに教会に行く、みたいな感じで出て行ったからね。あと、ゆうべの日付変わった後にあたりに鳴り響いてたベル? というか、なにかかわいい感じの音楽があったじゃない。あれはやっぱりイースターのはじまりだったみたいで。さっきアンナに聞いたら、そんなことを言ってた。
とにかくここ数日はロシア系の人たちがすごく集まっているよね。
寿太郎
そうそう。西方教会と東方教会のイースターは、年によって同じ日にやる場合もあれば違う日の場合もあるみたいね。今年の東方はずいぶん遅めで、今日というわけか。とか言ってたら、今ちょうどイスラムのアザーンが鳴ってたけど。まったく宗教が入り乱れて変わった街です、エルサレム。
スガ
イスラムとキリスト教とユダヤ教。ほんとに、ちょっとわけがわからないレベルの入り乱れぶり。で、物価が高いわりにそんなにお金があるようには見えなかったり。おかしなとこだよ。でもまぁ、ここはヨルダンと比べればちょっとネットが早いから、おかげでおもい仕事がひとつ、どうにか片付いたというのはあるんだけど。
年明けくらいから、そろそろやるよとか言いつつ、いつまでたっても始まらないメールマガジン有料版の発行という話がありまして。有料版のスタートと一緒にする予定のちょっとしたお知らせがあるんだけど、それの目処がようやくつきつつある感じ。やっと来週か再来週には、正式にお知らせできると思います。
寿太郎
日々のことに忙殺されてなかなか思うように進んでこなかったけれど、ようやくちょっと状況が進展し始めてますね。なにしろこれからネット状況から何から不安なアフリカだから、それまでにいろいろなことの目処をつけておかないと。
スガ
そうそう。メルマガをずっと、毎号読んでくれている人なんかもう、「有料版はじまらねーなーw」と思ってるんじゃないかと思うんですよ。資金的にヤバいとか言ってるくせに、大丈夫かよと。
寿太郎
全然大丈夫じゃないっすよね。貧乏ヒマなしですよ。
スガ
いつも見ていただいている方にはちょっと面白がってもらえるお知らせになるはずなので、もう1週間か2週間、お財布にぎりしめてお待ちくださいと。
寿太郎
というわけで、物価の高いイスラエルもそろそろ終えて、一度アンマンに戻るわけだけど、先日のアンマン滞在で取材したのがお医者さんのムハンマドでした。
スガ
ムハンマドね。ちょうどぼくたちふたりもアンマンでは風邪ひいてたけど、ムハンマドにつなげてくれたのが、たぶんぼくたちが風邪をもらったライハナくんで。
アンマンではまず、ぶっとんだ感じの日本人女性と知り合ったんだけど、彼女に圧倒されたり半日息子のライハナくんと遊んだり、ぐしょ濡れの彼を抱っこしたりしてたら、その日から強烈にからだが重くなって…。
寿太郎
きみはなんだか、ほとんどお父さん状態になって彼の面倒を見てたからね。ライハナくん→スガくん→俺 と風邪が移ってきた感じがある。実に元気な子だった。ぐしょ濡れだったのは死海に行ってきたからで、その死海では目に濃い塩水が入って泣きわめいていたみたいだけれど。
まあともかく、ライハナくんのお母さんによると、子どもの面倒をよく見てくれた若くて優しいお医者さんがいる、ということだったので、彼のところにうかがってみたわけですね。
スガ
ムハンマドに会いに行った時には僕たちの風邪はもうだいたい治ってしまっていたのが惜しいというかなんというか。
それにしてもムハンマドはまぁ…もう好感しか持てなかった。
寿太郎
好青年でしたね。そしてめちゃくちゃに真面目。真面目すぎてツッコミどころがない。「マジメか!」しか言うことがないし、それにしたって「はい、マジメです」という感じだからね。
スガ
部屋に服がバサーっと積み重なってるとか、じつはちょっと煙草吸ってるとか、そういうツッコミどころはあるんだけど、それに対する彼の恥ずかしがり方とかを見ていると、ほんとに純粋なんだな、というのが伝わってきて。なんというか、かわいいんだよね。
寿太郎
そうそう。特に煙草のとこなんて、医者なんだからこんなもの吸っちゃだめだ、ということについて真面目なのがよくわかる。でも煙草ぐらいいいじゃないですか、ねえ。そりゃストレス溜まりますよ、あのハードな生活は。
スガ
忙しいから、彼の部屋もクリニックのすぐ近くで、日付かわるまで仕事して、帰ったらすぐ寝る、みたいな生活だもんね。2つの病院のかけもち? だし、大変だ。
寿太郎
しかも救急のケースとかで呼び出されることもしばしば。好きじゃないと絶対続けられない仕事だよね。あらためてお医者さんというのは大変なのだと実感させられました。
スガ
あとムハンマドは日本の男性の一人暮らしに近いスタイルだったけど、じつはそういうのはほとんどはじめてで。服が散らかっていてお茶とやかんとナツメヤシがあるだけで、みごとに生活感なかったね。
寿太郎
なかった。でも仕事忙しい男のひとり暮らしなんてあんなもんじゃないですかという感じだね。料理とかも、そもそもできる時間がないみたいで、外食が多いという話だった。
スガ
まともな生活感とか秩序とかがない分ね、部屋の鴨居…? じゃないけどドア枠の天井に近い縁のところにとつぜんKIWIの靴磨きがポツンと置いてあったり、なぞの黄色い液体がボトルに入っていたりするのがすごく目立ってて。そういうのが、なんかわかるなぁという感じはしたけどね。
部屋をどうしたい、とかっていう発想そのものがない感じ。
それでいて恥ずかしがりはするんだけどw
寿太郎
そりゃプライベートな空間だから、恥ずかしがりはするでしょう。
本文にも書いたけど、まず第一に寝る場所ですからね。部屋にいる時間がそもそも短いけれど、その短い時間のうちの7割ぐらいは睡眠時間なんじゃないかという気はする。
ところで、「ムスリムのお医者さん」というのがどんな人なのかと思っていたけど、日本のお医者さんとか、たぶん他の欧米のお医者さんともほとんど変わらないよね。先端医療の知識や技術はかなり広く世界じゅうで共有されてると。当たり前の話なのかもしれないけれど。
スガ
西洋医学ってもともとはイスラム圏から入ってきたんだよね。だからなにかちがう流儀をのこしているかと思ったけど、もう、彼がカイロの大学で学んだテキストからして英語という。
寿太郎
うん、だから外から見える部分においてはほとんど変わらない。ただ、内側にある医者としての哲学とか倫理だとか、そういう部分が強くイスラムと結びついてる感じはありました。そのあたりがおもしろい。彼はまだ研修医の身分だけれど、たとえば終末医療とかの分野になってくるとけっこう違いがあるのかもね。死生観とかがかかわってくるから。
スガ
たしかに、終末医療はちがうかもしれない。なにしろ「インシャアッラー」だからねぇ。終末医療とか脳死とか臓器移植とか避妊とか、宗教観が色濃く出る部分についての考え方を聞けなかったのはちょっと悔やまれる。
寿太郎
時間もなかなか限られていたし、そういう点は課題ですね。それにしても「インシャアッラー」と医療の間で、ということは面白い。宗教と医療の間には様々な問題がありますからね。たとえば、ユダヤの厳しい人たちとかがそうだったと思うけれど、輸血をしてはいけない宗教とか、いろいろ。日本で訴訟なんかがあったりもしました。
スガ
彼のクリニックに行ったら、想像していたよりも日本と同じような感じで、それに彼の話を聞いても一見あまり違いを感じなかったから、それで見逃してしまったところはあるね。
今医者やっている友だちに、日本の医療ではどうなのか、というのをきみは聞いていたりしてたけど。
寿太郎
そうそう。伝統的なアラビア医学というのは日本における漢方の位置づけと似てる部分があるので、漢方について聞いたりとか。あと研修医のシステムとかね、丁寧に色々教えてもらいました。もう僕は彼とは小学生の頃からの付き合いだ。埼玉あたりで整形外科にかかりたい読者の方、おられましたら、ご紹介しますw
スガ
ではつづいて、今週のおたより。今週は東京都豊島区にお住まいの「ごはんはにがてです」さんからエアメールをいただきました。
寿太郎
ん、気のせいかこの方どっかで出てきた気がしますね。ごはん苦手ですか。ぼくは日本のお米が懐かしくて仕方ありません。
スガ
昨日中華で米食べたけど、なんか中国のにおいしたしね。日本クオリティのごはんはなかなか食べられないものです。
で、おたよりは
「ヨーロッパ以外の国だとだいたい、物価は日本より安くて、バカみたいな値段で買えるのでしょうか。すごくハッピーですね」
寿太郎
ところがどっこい!!!
まさに今が地獄です。ここイスラエルは、頭おかしいんじゃないかというほど物価が高い。たとえば500mlのペットボトルのコカコーラ、これが日本円にして200円以上します。どうなってんだ!
スガ
物価の話になるととつぜん元気になる寿太郎くんw 怒りにうちふるえております。
寿太郎
それじゃあなんだか俺が守銭奴みたいじゃないですか。いや、うちふるえますよこの物価は。
スガ
まぁ、イスラエルはたしかにちょっとびっくりするよね。街なかのぼろい食堂で、アラブめしなんか食べただけで、あっという間に1200円以上飛んでしまったり。
寿太郎
政治的な事情もからんでいるんだけど、とにかく凄まじく物価が高い。唯一、公共交通機関だけはまともな値段ですね。これは政府が価格を抑えているみたいですけど。
スガ
でもこの間宿に泊まってた他の日本人と話してたんだけど、日本の物価て、食費とか、抑えようと思ったら、けっこう安いよね。
寿太郎
格差社会における二極化ってことが大きいんじゃないですかね。貧しい階層の人々は、吉野家だのユニクロじゃないと消費ができない。だからニーズに合わせて「安いカテゴリ」の何やかやが豊富になってくる。一方で高いもんはべらぼうに高いと。
スガ
んー、日本の格差社会というのはヨーロッパと比べても非ヨーロッパ圏と比べてもまだ、ぜんぜんじゃないのかな。
で、90年代以降出てきたそういうチェーン店は安くてもクオリティがバカにならないのがすごいところで、そこそこお金持ってる人もたまには行くかもしれない。たとえば表参道とかそういうところでも、たとえばナントカ製麺みたいな安いうどん屋があったりして、手打ちのうどん200円とかだっけ? ああいう非ヨーロッパ圏と比較しても健闘するレベルの安飯が、物価の高いところに突然ある、というのは、すごく日本の特殊なところだなぁ、と思ったりするな。
寿太郎
丸亀製麺は実はけっこう高いですよ。トッピングとかついついするとなかなかの額になる。はなまるうどんなんかはひと玉100円とかなのかな。ああ食べたいな、うどん。
それはともかく、なにしろ選択肢が山ほどあるのが日本の特徴だなという気はしますね。日本の場合ここ数年のぶっ飛んだ経済政策もあって、色々ちぐはぐになっているし、それが多様性を生んでいるとも思います。東京にいればどこの国の料理も食えるからね。そんな状況になってる街なんて、今のところほとんどない。
スガ
ほんとに吉野家とかユニクロじゃないと消費ができないというより、お金がなくなったけど、でも消費社会としては成熟していて。だから食費をきりつめて、欲しいものを買う行動様式、みたいなのが90年代後半以降言われるようになったよね。
寿太郎
一点集中豪華主義でいけ、みたいなことを寺山修司が言ってましたね。汚い四畳半に住んでもかっこいいスポーツカーを買え、とか。
スガ
バブル崩壊後のカルチャーの背後には、寺山修司あり、だったのか…。寺山修司とか出てくるとムダに説得力が増すのが困る。
寿太郎
ところで、物価が安かったのはどこの国でしょう。単に安いだけなら中国とかだけれど、なんというかコストパフォーマンス的な意味で。
スガ
んー、コストパフォーマンス。クオリティに対してこれは安い!、というのが多かったのは東欧じゃないかな。ブルガリア、セルビア、ポーランド。
寿太郎
そうだね、それは同意します。あとチェコなんかも含まれるかな。
スガ
そうね、あのへんは全般的に、安くてもクオリティがそんなに低くならないというか。
寿太郎
あ、モロッコはどうでしょう。
スガ
マーケットで、古着が1枚10円でたたき売りされてたことがあったね。あの時買った服、最近けっこう愛用してる。
寿太郎
生しぼりオレンジジュースもうまかった。タジン鍋とかもなかなかでした。そういう意味では、あそこは穴場かもしれないね。
スガ
そうですね、また来週。