スガ
朝だよ。メーメー鳴いてるよ。
寿太郎
ヤギの鳴き声はなんでこうも絶妙にマヌケなんでしょうね。
スガ
あそこにいるのは羊じゃなかった?
寿太郎
羊ってメーメー鳴くんでしたっけ。よくわからなくなってきた。
スガ
ヤギはメーメー。羊は…やっぱりメーメー。
このへんは羊とかヤギとかラクダとか、人を小馬鹿にしたような顔した動物がたくさんいるよね。
家畜にバカにされる人間たち。
寿太郎
表情だとか鳴き声だとか、とにかく全身全霊で小馬鹿にしてくるね。こうも寝不足な朝にはまったく癇に障る。まったく、こんなにいい景色だというのに。
スガ
でも彼らは別に寿太郎くんを小馬鹿にしてるわけじゃなくて、なにかこう、世の中とか宇宙とかにメーメー言っているのかもしれないよ。彼らの姿勢を見習っていきたいです。表情も人を小馬鹿にしたようでいて、それでいて深淵なかんじ。
寿太郎
まあどうでもいいです。それにしても凄い景色ですね、ここは。
スガ
ここ、目の前崖だからねえ。絶壁がそびえてる。
寿太郎
モロッコの内陸部、トドラ渓谷という、赤い崖が凄い勢いで切り立っている場所に来ております。けっこう緑も豊かで、小川のせせらぎは綺麗だし、観光地として有名な割にのどかでいいところですね。
スガ
鳥がチュンチュン、羊がメーメー。天気もいいし、のどかでさわやかな朝ですよ。
気温的には日本とそれほど変わらないし、一気に春がきた感じ。
寿太郎
モロッコは緯度的にちょうど日本と同じぐらいなんですよね。ようやくここまで南に下ってきた、という感じだ。いい季節ですね。もっとも、桜は咲いていないけど。
スガ
桜といえば、そういえばぼくはマドリードで見かけたんだよね。マドリードもわりと暖かかったから。
で、今週はそのマドリードのアルベルトだけど。
寿太郎
はい。実にまったく常識的な人物でした。
スガ
とくにキャラの濃い感じではなく、ふつうにとても感じのいい人で。
なんというかこう、それこそ会社の同じ部署にいたら仲良くやれそうな感じ。さりげなく仕事もできそう。
寿太郎
物腰が穏やかで、知性を感じる感じの人ですね。実際、話し方もすごく論理的で、言ってることもわかりやすかった。いろんなことに対して自分なりのしっかりした見解を持ってるから、普通の話をしてても内容が濃く感じました。
スガ
今まで取材させてもらった男性陣は突っ込みどころだらけの人が多かったからね。ビロールとかジハンとかトトさんとか。
寿太郎
うん。まあアルベルトも長く付き合えばそういう部分はあるのだろうけど、なんというか、社会人的まっとうさという意味ではかなり日本人の感覚に近い人だったね。
スガ
そうそう。アルベルトを紹介してくれた友だちが、じっさい彼と同じ部署で向かいのデスクで働いていたんだけど、彼女によると昼休みにクイズ大会をして遊んだとか、ネットのくだらない動画が大好きだとか。付き合いが深くなるともっといろんな顔がみえてくれるのかもしれない。
だからまぁ本当は、一緒にサッカーくらい観に行きたかったというのはあるけどね。
寿太郎
そうですね。ウェブでもメルマガ本文でも書いたけれど、彼がどんな態度でサッカー観戦をするのかというのは本当に気になる。熱狂して絶叫しているような様子はとても想像できないからね。
スガ
うん。サッカー好きと聞いてたから、彼と会う前は、サッカー狂すぎてまともに話がつうじないレベル、みたいなのも覚悟してたんだけどね。まったく良識派でむしろびっくりした。偏見でしたすみませんという。
寿太郎
それは酷い偏見だ。べつにスポーツファンみんながフーリガンみたいなわけじゃないんだからw まあでも、「俺はレアルの話になると腹が立ってくるから」みたいなことはわりとマジともジョークともつかない言い方してました。面白かった。
スガ
ああそうかそんな話してたのか。
ぼくはその時写真撮ってていなかったのかな。アルベルトでもそう言われるとおっかないw
もちろんみんながフーリガンなわけはないんだけど、街でサッカー好きな人たちの様子みてると、やっぱりかなり熱を感じるからね。
寿太郎
うん。また彼にはお会いしたいものだね。というわけで、先週お休みだった質問コーナーにいきましょうか。
スガ
はい。先週はきみの体調がやばかったからね。ちょっとお休みさせて頂きましたけれども。
今週は、神奈川県在住の鬱屈トレインさんよりエアメールをいただいております。
寿太郎
ヤバそうな名前ですね。乗りたくないなその電車は。
スガ
やたら急カーブ、急停車が多そう。ヤバいね。質問は
「ぼくは昔インドに行ったとき、熱を出して3日間寝込みました。半年も旅を続けていると、体調を壊して寝こんだりしないのでしょうか。今のところいちおう毎週メールマガジンが届いていますが、ふたりが寝こんだらメールマガジンも届かないのではと心配です」
ということです。タイムリーに体調の話ですよ。
寿太郎
最後の一文とか特に捏造の匂いがプンプンしますけどね。まあそれはともかく、体調の話。
スガ
この人は僕たちの体調よりメールマガジンが届かないのを心配してくれてるんだよね。うれしいなぁ。
寿太郎
小規模に体調崩すことはけっこうありますよね。暑くなったり寒くなったりするし、あんまり落ち着いて寝られないことも多いから。まあでも、本格的に寝込むほどのことは先週が初めてだったかな。
スガ
季節の移り変わりに加えてあちこち移動してるからね。場合によっては急に暑くなったり寒くなったりする。でもたしかに、そのわりに本格的に寝こんだりはあんまりしてないという。
寿太郎くんの小規模な体調不良…というか精神不良はもういつものことだしね。
寿太郎
まあストレスの原因が誰にあるかという話ですけどね。結構なことだ。
スガ
あれw
寿太郎
そうだ、それはともかく、予防接種とかのことはありますね。日本出る前には何本も注射打ってわりと大変だった。
スガ
そんなのあったね。1週間おきとか2週間おきとかに高価な注射をポンポン打ってた。あれ、総額いくらくらいでしたっけ。
寿太郎
狂犬病に肝炎、その他もろもろ。4万は優に超えてたと思いますよ。日本でも病院によって違うし、海外で打てば安く上がるケースなんかもあるから一般化はできないけどね。しかし君はそう過去のことみたいに言ってるけど、これからまた予防接種受けないといけないんですからね。
スガ
もうひとつ残ってるのがあった。黄熱病でしたっけ。
寿太郎
黄熱病。これを受けないと入国できない国があるレベルです。あとアフリカではマラリアが怖いけれど、これは予防接種みたいな話はないので、薬でどうにかするしかない。
スガ
なんかマラリアの予防薬は悪夢を見るとかいう話があるけどw
寿太郎
あります。副作用が非常に強い。怖いとこだけど、死ぬよりマシですからね。エジプトあたりから本格的にきちんと考えないといけない。
スガ
そうか。寿太郎くんは悪夢とか似合うよね。悪夢にうなされて日に日にゲッソリしていく様子が目に浮かぶ。ヤバいなぁw
寿太郎
楽しそうだな。結構なことだ。
あと本当に入院するハメになったときなんかのために、海外旅行保険にがっつり入っていたりしますね。まあでも、この話はまた別の機会にということでいいかな。
スガ
あの、どうでもいい話なんだけどさ。昔まんが「日本の歴史」ってのが家にあって。21冊セットくらいで旧石器時代から現代まであるやつ。
寿太郎
なんだ突然。俺も持ってた気がする。
スガ
第二次大戦中の様子を描いたシーンで、東南アジアに出兵した日本兵が「マラリアでもうダメだ!」と言ってこと切れるシーンがやたらと印象に残っていて。
マラリアというとそればかり思い出します。
寿太郎
断末魔のセリフなのにやたら説明的だな。
スガ
そうそう。今考えるとすごく説明的なんだけど、当時は小学生低学年だったからたぶんマラリアの意味が分からなくて。なにか分からないけど、とにかく兵隊さんが「マラリアでもうダメだ!」と言って死んでいく。これはマラリアというのは相当ヤバいものだぞ、と。
寿太郎
それは教育的に正しい効果ですね。
スガ
ぼくたちもマラリアにかかったら「マラリアでもうダメだ!」とメールマガジンを出してこと切れることにしよう。
寿太郎
メールマガジンを出す余裕があるぐらいだから全然もうダメじゃないですねw でも笑いごとじゃないですよ。日本人旅行者で死んだ人とかいますからね。注意を怠らなければ大丈夫なんだけど、スガくんなんか圧倒的に怠りタイプだからね。気をつけてくださいね。
スガ
そうですね。また来週。